もじゃさんは多肉植物専門なのであまりうどんこ病の被害に曝されることは少ないですが、ハオルチアを含む多肉植物もうどんこ病にかかるようです。
住友化学園芸のeコミュニケーションのこのページにうどん粉病に効く薬が羅列してあるけど、その対象品目の多さがすごいっす!
参考URL:https://www.sc-engei.co.jp/resolution/pestanddisease/photolist/details/1280.html?showtab=3
うどんこ病はそれこそ道行く雑草にも感染するポピュラーな病気です。葉っぱにうどん粉ぶちまけたんじゃないかって感じで白くなっているものがありますよね。
あれは胞子体で菌が感染してから十分に育った状態です。
ひどくなれば株も枯れてしまいますが、発生初期で落ち着いて対処すれば簡単に駆除できますのでどんな病気か、どんな対処をすればよいかを説明しますのでこの機会に覚えていってくださいね(*´▽`*)
うどん粉病とは
葉の表面にまさにうどん粉のような白い粉をまぶしたかのようなカビが生える病気です。
致死的な病気ではありませんが、カビに覆われたところが光合成できずに生育が悪くなったり、葉から栄養を吸収されるために株が弱ったりします。
花きであれば花が咲かなくなったり、観賞植物では葉が委縮したり見た目が悪くなります。
きゅうりなどの野菜、ぶどうなどの果樹で発生した場合は食味が悪くなったり収穫量が減ったりするので、生産者は畑で発生したら農薬などで早急な対応が必要になります。
真夏を除く春から秋にかけて発生しやすく、特に多湿と乾燥、暑いと涼しいを繰り返す時期には多発しやすいです。
ガーデニングなどの園芸であってもすぐに広がってしまうので見つけたら適切な対応をしましょう。また、日ごろから発生しないような環境作りが大事です。
英語ではPowdery Mildewと言いますがMildewとも表記することもあります。Mildewの場合は糸状菌が媒介する病気を表すのでべと病や灰色かび病などをひっくるめて言うこともあります。
うどん粉病の原因は色んな糸状菌
原因菌は小さな胞子囊を作る子嚢菌門のウドンコカビ科 (Erysiphaceae) に属する糸状菌です。
ウドンコカビは生きた宿主から離れた状態では増殖できない絶対寄生菌で被子植物にしか寄生しないと言われています。
そして、その大部分は菌本体が植物の表面から露出している表皮寄生という形をとります。
この特徴はちょっと特殊でうどん粉病の原因菌には他のグループの菌は存在しないようです。
被子植物にしか寄生できないという性質上、進化の過程で独特な性質を得たようです。
植物への寄生は胞子が風に乗って葉に付いたところから感染が始まります。
作物ごとの主な原因菌
- ブドウ:Erysiphe necator や Uncinula necator
- 麦類をはじめイネ科植物:Blumeria graminis
- モモ:Sphaerotheca pannosa
- イチゴ:Sphaerotheca humuli
- トマト:Oidium lycopersici
- キュウリ:Erysiphe polygoni や Sphaerotheca cucurbitae
- バラ:Sphaerotheca pannosa や Uncinula simulans
- クワ:Phyllactinia moricola
ほかに被害に遭いやすい品目は、ウリ科やキク科が多いですが、以下の通りです。
大体の植物で発生すると思った方が良いでしょう。
アジサイ、オクラ、ガーベラ、カボチャ、キク、ゴーヤ、サボテン、シャクヤク、スイカ、ズッキーニ、ストック、ナス、ニンジン、ハナミズキ、パンジー、ピーマン、マクワウリ、多肉植物
など(50音順)
うどん粉病の感染機構
風媒伝染病なので、どこからか飛んできた胞子が葉っぱにくっつくと気温20度、湿度100%で2~4時間以内に分生子という感染のきっかけを作る触手みたいのが発芽します。
分生子が葉の表面を保護するクチクラ層を分解する酵素を使い穴を開けます。
さらに、細胞内に入り込むために別の酵素を使って細胞壁と細胞膜の間に入り込み栄養を吸収する機関を肥大させます。
ここまでが24時間以内に行われ、次第に葉表面に菌糸を広げていき各所で葉に侵入しさらに増えていくというサイクルを始めます。
分生子を発芽させるには高湿度が必要ですが、30度を超える高温化では発芽しません。
菌糸の生育と胞子形成・飛散には湿度40%から70%の間でなければいけないため、白い粉の胞子体には大量の水が有効です。
うどん粉病の予防方法
植物もアホではないので自己免疫システムみたいなものを持っています。
体内に何かが侵入してきそうな気配を察知すると速やかにその部分にパピラと呼ばれる物質を形成し侵入を盾のように防ぎます。
かかりやすい病原菌でも20%~30%も防ぎ、かかりにくい病原菌であればほぼ侵入を防いでくれます。
基本的にはこのシステムを正常に働かせるために健康な株を作り環境を整えることです。
では一体どうすればよいでしょうか?
いくつかポイントがあるので紹介します。
肥料を与えすぎないように注意する。
施肥をしたときに窒素が多いと細胞1つ1つが肥大してしまい葉や茎が柔らかくなってしまってうどん粉病だけでなく、アブラムシやカイガラムシなどの汁害の害虫なども発生しやすくなります。
あと、病害虫は窒素の匂いが大好きなのです。窒素の匂いに惹かれて集まってきます。
空気が滞らないよう風通しを良くする
風媒伝染病ですが、空気の滞っているところでは発生後、胞子が近くで発芽しやすく被害が大きくなりやすいです。
分生子の発芽を防ぐためにも蒸れない環境と、菌糸が繁殖しにくい環境を作りましょう。
土のはね返りに気を付ける
基本的に土壌菌なので葉の表面に葉の表面に付着できなかったものは土の中で虎視眈々と感染の機会をうかがっています。
そのため水やりの際にびしゃーっとかけると土がはねて病原菌が舞い上がって葉に付くことがあります。
家庭菜園みたいに少し面積の広い場合はマルチなどを敷いて土がはねるのを防ぎましょう。
すぐ乾くように水はけの良い土を使う
作物によっては難しいかもしれませんが、土がいつまでも湿っていると感染の機会が増えますので、さっと乾くような土の配合にしましょう。
腐植土、ゼオライト、パーライト、バーミキュライト、ヤシガラなどの多孔質のものや土の団粒化を促進するような資材を積極的に使うとよいです。
圃場においては畝を高くするのも効果的です。
植物を密生させない
密生していると蒸れてしまい感染の機会が増えてしまいます。
風通しを良くするためにもある程度間隔を開けて育てましょう。
また、個体でも葉が込み合っても蒸れますので不要な下葉や枯れ葉は定期的に除去しましょう。
雑草も生えているようでしたら定期的に除草すると良いですね。
銅剤などの予防薬を使う
ボルドーZやキノンドーなどの有機銅剤は病原菌に対して強い予防効果があり、フランスのボルドー地方でのワインに使うブドウの産地では130年以上も前から使われており、予防効果は折り紙付きです。
耐性菌もほとんど出ておらず、有機JAS規格でも使用できる農薬として認められている優れものです。
ただし治療効果はないのであくまでも予防です。
また、銅剤が表面をコーティングするため汚れや染みができやすいのが難点ですが、銅は植物に生育に必要なミネラルでもあるので生育が良くなるおまけ付きなのでデメリットを上回るメリットは期待できます。
価格もそんなに高くないので、常備しておくと良いです。
抵抗性品種を使う
品種改良や抵抗性のある台木を使うことで発生を抑え収量を安定させます。
あくまでも抵抗性なので完全に発病しないわけではありませんが、その差は有意にあるということなので、大分手間も費用も負担は軽くなります。
カーネーションやキュウリなどの被害に遭いやすい農作物では抵抗性品種が多く栽培されています。
うどん粉病にかかった時の対処法
発生の段階によって対処が異なります。初期のうちであれば簡単に対処できるので資材集めてババっと迅速にやっつけてしまいましょう。
症状が進行してくると感染している葉や茎、花や実などを除去し、殺菌剤などの農薬散布をする必要があります。使用できる作物や使用回数をしっかり確認して行いましょう。家庭菜園での場合も、農薬のラベルにある収穫前に日数を確認しておきましょう。
葉っぱの表面が真っ白になってしまうくらい広がってしまったら患部を除去して薬剤撒布になりますが、発生初期では大量の水で洗い流し、しっかり乾かせば対処できます。
ダイソーなどの100均でも売っているもので防除可能ですので、とにかく早めに対応しましょう。
大量の水をかける
先ほども書きましたが、菌糸や胞子の生育や飛散はある程度乾燥が必要で、高湿度下では生育できません。
発生初期であれば定期的な大量の水で散水すれば除去可能です。
ただし、井戸水では不可です。
また、土がいつまでも湿ってしまう環境では再び発生する可能性がありますので、風通しには気を付けましょう。
重曹スプレー
病原菌の発育に必要なphが酸性であることが多く、重曹でアルカリ性に傾けることで防除する仕組みです。
しかし、ただ水に重曹を混ぜるだけでは葉っぱ表面で水滴になってしまってかけムラができるのと、乾いたときに重曹が高濃度になってしまい薬害が起こる可能性が高いので使用には注意が必要です。
まず水滴化を防ぐために表面張力を下げる必要があります。
界面活性剤やアルコールなどを混ぜるとべちゃっと広がりやすいです。
作り方は、重曹の濃度は液体1リットルに対して2グラムの濃度で混ぜてスプレーボトルに入れます。、表面張力を下げるためには焼酎甲類がおすすめです。度数によって変わるので何とも言えませんが、アルコールが5%くらいになれば大丈夫かなーと思います。
しゅっとしてベタっと広がったらオッケーです。何回か試して様子を見てください。
木酢液スプレー
ホルムアルデヒドを含む様々な物質を含む木酢液は、脱臭、防臭、防腐、防虫、防カビ、防菌、微生物活性、抗菌、還元作用を有していると言われています。
50倍から100倍希釈で用いると殺菌作用があるので、ホームセンターの園芸コーナーなどで購入して霧吹きで散布しましょう。
木酢液はポリフェノールなどの有機酸と多数含み、植物体内にある余剰窒素の代謝を促し健全な株を作るのに役立ちます。
また、土壌に撒けば有用微生物の繁殖を助け病原菌を抑え込むこともできますので積極的に使ってみてください。
もじゃさんは木酢液・竹酢液は大好きです!
いつもお世話になっています!
ストチューなどの自作できるもの
ストチューは食酢と甲類焼酎を1対1の割合で混ぜたもので、アブラムシやうどん粉病など昆虫忌避と防除効果が期待できます。
また酢に含まれるアミノ酸や酢酸は窒素の代謝を助けます。
あと、納豆菌の培養液も予防には効果的と言われています。細菌性の病気が発生するかしないかは、菌同士の陣取り合戦の様なものなので、先に納豆菌のような有用な菌が繁殖してしまえばあとから来た病原菌は寄生しにくくなります。
病害虫が大発生しているときはあまり役に立ちませんので、予防や発生初期に用います。
日頃から散布を心がけて入れば、ちょっとした変化に気が付くようになり発症しても早期に対応ができるので被害は最小限に抑えられます。
虫や病原菌の嫌がるものミックス
木酢液やホワイトリカー、甲類焼酎をベース(全部混ぜても良し)に唐辛子、ニンニク、ラベンダー、ハッカ、ドクダミなどのシュシュのハーブを入れて1か月ほど冷暗所で静置してエキスを抽出したものもかなり有効です。
汁害を被害をもたらすアブラムシやカイガラムシ、食害のヨトウなどの忌避、カビ系の病気の予防に有効です。
これらの自作の液に限らず、希釈して使ったものは当日中に使い切りましょう。
変質したり雑菌が湧いたりして悪影響を及ぼす場合があります。この辺りは50倍から100倍希釈で使います。
農薬散布
胞子体が広がりを見せて白い粉の範囲が広がりだしたり、植物が変形しだしたら農薬の出番です。
使用方法についてはそれぞれの殺菌剤のラベルに書いてある通りに使います。用法用量を守らないとかえって逆効果になる場合があります。気を付けましょう。
また、同じ薬剤ばかりを使っていると薬剤耐性を持った病原菌が出てきてしまいますので、必ず薬剤は数種類用意してローテーションで用いましょう。
おススメの農薬
やっぱり使い勝手の良さではベニカXスプレーです。殺菌だけでなく殺虫効果もあるので一本は常備しておきたいです。でも、これだけではだめです。耐性菌を出さないためにもあと2種類くらいは持っておきましょう。
しかし、ここ超大事です。
ベニカXスプレーに含まれる殺菌成分のミクロブタニル(FRAC:G)は、よく使われる代表的な農薬GFオルトランCに含まれる殺菌成分トリホリン(FRAC:G)と同じ殺菌機構なのでローテーションには使えないです。どちらか1つにしましょう。
そしてこれも重要。ベニカシリーズ、名前ごとに入っている有効成分が違うので、くそややこしい。統一するか、消費者にちゃんと周知しろ、マジで。
- ベニカXスプレー→ペルメトリン(IRAC:3A)・ミクロブタニル(FRAC:G)
- ベニカXファインスプレー→クロチアニジン(IRAC:4A)・フェンプロパトリン(IRAC:3A)・メパニピリム(FRAC:D)
- ベニカXネクストスプレー→還元澱粉糖化物(IRAC:UN, 物理攻撃)・クロチアニジン(4A)・ピリダリル(IRAC:UN,様々なタンパク質合成阻害)・ペルメトリン(3A)・マンデストロビン(FRAC:C)
こんだけ違うの、ベニカXスプレーが一番安いから使っている人が多いけど有効成分まで気にしてないと思うので、これを機に気にしていただければ幸いです。はい。
んで、作用機構を考えるとベノミル(FRAC:B)のベンレート水和剤と多作用点接触活性化合物のダコニール(FRAC:M)のセットが良いかと思います。
あと、抗生物質系の農薬もあります。かなり強力です。有効成分で何某マイシンと名の付くものは抗生物質系です。
ストマイとかサプロールとかがあります。
強力なので、成長点が変異を起こすことがあり奇形のものが出てくることがあります。葉脇や頭頂に水滴が溜まらないように気を付けましょう。
うどん粉病の豆知識
生きた葉や茎にしか寄生しないのです。
しかし、枯れ葉や胞子の隠れ家になります。冬は胞子が作れないので主な宿主が枯れていたり休眠している間は根元の雑草に寄生して春を待ちます。
最初の方で病原菌の種類に触れましたが、基本的にはバラに寄生する菌はバラのみ、ウリ科のものはウリ科のみ、のように感染できる種類が限られています。
とはいえ、うどん粉病を引き起こす原因菌は自然には数多いますので環境さえ整えば多肉ですらうどんこ病の被害にあいます。
多肉植物もうどん粉病にかかる
そうです、多肉さんもうどんこ病にかかるのです。
ただ、いろんなページを見ていますと、この金の成る木の状態をうどんこ病と勘違いされている方も結構います。
花月などのクラッスラ系は葉っぱ表面に細かいへこみがあります。
この凹みに水道水や肥料に含まれるミネラルが溜まって乾いたときにできる塩です。
まぁ要するに水垢みたいなもんです。
クエン酸や食酢などを含ませた雑巾でしっかり拭いたら取れるので、焦らないでください。
本当のうどんこ病は胞子体が白い粉をまぶしたようになり、多肉の場合はクチクラ層が厚いので感染部が萎縮します。
また、感染している場合は生育も悪くなりますので見た目がしょんぼりしてきます。
偽うどんこ病はいつまでも元気だし白いの増えないんでよく見てくださいね^^
まとめ
多肉植物ですら罹患するうどんこ病は原因となる菌が数多く存在します。
宿主が限定されているせいもあって、同じ種類の植物を密生させて育てると爆発的に広がりやすいので注意してください。
しかし、異変をいち早く察知して発生の初期段階で対処できれば大量の水、重曹、木酢液など簡単に手に入るものでも防除が可能です。
葉っぱ全体が真っ白になってしまう末期状態の場合は、患部を取り除き農薬を散布して鎮圧しましょう。
うどんこ病が発生していないときは日ごろから圃場をきれいに管理して風通しを良くする、肥料を与えすぎない、など植物が健全に育つように気を付けましょう。
また、木酢液やニームオイル、有機銅剤などを定期的に散布することはうどんこ病だけでなくその他灰色かび病やべと病などの疫病の予防にも繋がります。
自分が愛情をかけて育てている植物たちが元気に育ってくれていると嬉しいですよね!
病気や害虫をはびこらせないようにしていきましょう!
最後までご覧いただきありがとうございます。
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