多肉植物のウンチク

ハオルチアは自分で土に潜るってまじ?収縮根で地中に埋まる仕組みを調べてみた

はいどうも、もじゃさんです。

先日、Instagramの「PUKUBOOK」で、かなり気になる投稿を見かけました。

簡単にいうと、「ハオルチアは収縮根という特殊な根を使って、自分で地中へ潜っている」というものです。

自生地で葉先だけを地表に出して埋まっている姿は知っていましたが、てっきり土砂が積もって埋まったのだと思っていました。ところが自分から潜るらしい。

ほんまかいな? と思ったんですが、植え替えてからだいぶ経った株を見ても、確かにあまり高さが出てないんですよね。

↑こいつ(ミラーボール)とか。中心から新葉が出て外葉を押すならムイッと持ち上がりそうなのに、あんまり高さ変わってない。
 

PUKUBOOKの投稿では、「植物自身に潜らせれば、園芸でも自生地のような姿を再現できるのではないか」とも考察されていました。めちゃくちゃ面白い。けど、確認できる範囲では論文などの出典が見当たりませんでした。
 

ということで今回は論文を漁って、主に次の4点を調べてみます。

  • ハオルチアは本当に根で土へ潜るのか
  • 収縮根はどうやって株を引っ張るのか
  • 乾燥による「根のしぼみ」と収縮根は同じなのか
  • 半地下生活のメリットと、園芸で再現できる可能性

 

先に結論:ハオルチアが収縮根で潜るのは「おおむね本当」

ハオルチア属の一部には、根の基部を短くして株を下方向へ引く収縮根(contractile root)が確認されています。

↓見た目としてはこんな感じ

ハオルチアの根っこの写真

真ん中の根がシワシワシワシワっってなってちょっと太くなっています。
※でも、この写真だけで収縮根と確定できるわけではありません。詳しくは後ほど。
 

ということで、

ハオルチアが根の力で地中へ潜る

という説明を研究論文による裏付けをしていってみましょう。
 

2008年に発表された収縮根の研究では、調査対象となった次のハオルチア4種すべてが、収縮根を持つと判定されました。[1]

  • ハオルチア・シンビフォルミス(Haworthia cymbiformis)
  • ハオルチア・ファスキアータ/十二の巻(Haworthia fasciata)
  • ハオルチア・レツーサ/寿(Haworthia retusa)
  • ハオルチア・ヴェノーサ(Haworthia venosa)

学名と分類は論文内で使用されているものです。なお、現在のKew Plants of the World Onlineでは、H. fasciataはHaworthiopsis fasciata、H. venosaはHaworthiopsis venosaとして扱われています。

ただし、この研究でハオルチアについて確認されたのは、主に根の外見や内部構造です。

ハオルチアの株が実際に年間何mm沈んだのかまでは測定されていません。株元に目印を付け、継続的に沈下量を測定した対象は、主としてアガベやユッカなど別の植物でした。
 

したがって、現時点で最も正確な結論は次のようになります。

ハオルチア属内の少なくとも一部には、株を地中へ引く構造を持った収縮根がある。ただし、すべてのハオルチアが同じように潜ることや、種ごとの沈下量までは分かっていない。

って感じです。
 

そもそも「収縮根」とは何なのか

図説 収縮根とは

収縮根とは、根の一部が長さ方向に短くなることで、株や球根などを土中へ引き下げる特殊な根です。英語では「contractile root」と呼ばれます。

ここで大事なのが、乾いてしぼむ根とは別物だということ。株元に近い部分に「縮むための構造」があり、そこが長さ方向へ短くなることで植物体を下へ引きます。[1]
 

収縮根の細胞は「横に膨らみ、縦に短くなる」

多くの単子葉植物の収縮根では、根の内側や中間部分にある皮層細胞が形を変えます。ざっくりいうと、配水管を包む伸縮性のあるクッション層みたいなものです。[1][2]

収縮すると、

  1. 皮層細胞が横方向へ膨らみながら、根の長さ方向には短くなる
  2. 根の基部全体が太くなりながら短くなる
  3. 外側の組織が押しつぶされ、維管束にも曲がりやしわが生じる
  4. 根の先端側が土中に固定されていれば、そのぶん株元が下へ引かれる

 

収縮根で起こっている細胞変化のイメージ

Northらの研究では、収縮根の一例で、収縮域の内側皮層細胞が非収縮部分より約25~30%短く、横幅は約2倍になっていました。[1]

この定量値はハオルチアそのものを測った値ではありませんが、収縮根ではこうした横方向への膨張と長さ方向への短縮が確認されています。

根の表面に見える横じわも、乾いてしなびた跡ではなく、内部が短くなった結果として外側の組織が圧縮されたものです。

別の多肉植物Ariocarpus fissuratusでも同様の変化が確認され、木部の通水細胞(wide-band tracheids)は非収縮部分より約17%短くなっていました。網目状の筒を横に広げると全体が短くなるようなイメージです。[6]
 

収縮根は何のためにあるのか

図説 収縮根の意義

収縮根の役割を一言で表すなら、

植物体を、その植物が生きやすい深さへ配置すること

です。
  

ただし、色んな論文を横断するように調べると、その意義は単なる「潜るための根」だけではありません。

収縮根は、植物体の深さを調節しながら、株の固定、温度環境の調整、吸水などを助ける複合的な器官と考えられています。
  

植物体の深さを調節する

植物は成長すると、新しい葉や茎が上方向へ伸びます。

そのままでは、地表すれすれに生きる小型植物や、地下に球根を持つ植物の位置が、少しずつ上へずれてしまいます。
 

そこで収縮根が株元を引き下げ、地上部の成長による「持ち上がり」を打ち消します。

冒頭のミラーボールでもじゃさんが気になっていた部分ですね。

Ariocarpus fissuratusでは、収縮根によって株が年間6~30mm土中へ移動しました。研究者は、この沈下が地上部の成長を相殺し、株の上面を地表とほぼ同じ高さに保っていると考えています。[6]

収縮根は、植物を一度だけ深く埋める装置というよりも、成長によって変化する株の位置を補正する仕組みと捉える方が近そうです。

ただし、ハオルチアについて年間の沈下量を継続測定したデータは、今回確認した論文にはありません。
 

砂や土の中で株を固定する

収縮根には、株を土の中へしっかり固定する役割も考えられています。特に小さな実生や背の低い植物、砂質土壌のように土が動きやすい場所では、株元を少し引き込むことが抜け上がりや転倒の防止につながります。

Northらは、乾燥して動きやすい砂質土壌で実生を固定・再固定できることを利点の一つとして挙げています。樹木状になるユッカで広い範囲の根が収縮性を持つのも、大きな地上部を支えることと関係する可能性があります。[1]
 

極端な温度を避ける

植物体や成長点を少し深い位置へ置けば、地上よりも温度変化が小さい環境を利用できる可能性があります。

地表面は、日中には直射日光で非常に高温になり、夜間には急激に冷えます。特に地面に近い小型多肉植物は、地表面温度の影響を強く受けます。
 

Ariocarpus fissuratusの実験では、収縮根によって株の上面を岩のある地表と同じ高さに保つことで、最高温度が抑えられ、極端な高温時の生存率が改善しました。[6]

ただし、この効果は「深く埋まれば必ず涼しくなる」という単純なものではありません。

この実験では、地表の岩が日射を遮り、土壌表面の温度上昇を抑えていました。収縮根による位置調節と、岩が作る日陰の両方が組み合わさっていた点が重要です。

また、ハオルチアの収縮根について、沈下前後の株温や生存率を直接比較した研究ではありません。

株元付近で水を吸いやすくする

収縮根は、株を引くだけでなく水を吸う部分としても少し特殊です。Northらが調べた収縮根では、収縮する株元側のほうが、根の途中よりも根の表面から内部へ水を通しやすい状態になっていました。[1]

収縮域では、

  • 水を通しにくくするスベリンやリグニンが比較的少ない
  • 生きた皮層細胞が残り、水の通り道が比較的連続している
  • 調べられた収縮根では、根毛が残る場合があり、横方向への膨張も土との接触維持に役立つ可能性がある

スベリン化・リグニン化した細胞層は、水が根の内部へ移動するときの抵抗になりやすくなります。ざっくりいうと「防水加工」が強くなるような感じです。収縮域ではそれが比較的弱いため、水を内部へ通しやすいと考えられます。

乾燥地では、ちょろっと雨が降っても地表近くしか湿らないことがあります。そんなとき、株元付近で水を取り込みやすいのは結構ありがたい仕組みです。
 

より湿った位置から新しい根を出す

アガベやユッカでは株元から新しい不定根が出ます。収縮根で株元が少し深くなれば、新しい根も地表より水分が残りやすく、温度変化の小さい場所から伸び始められます。

Northらも、より湿った土中から新根を出せることや、水・養分を得やすくなる可能性を挙げています。[1] ただし、ハオルチアで「深くなったぶん吸水量が増えた」と直接測った研究ではありません。
 

土を押し広げ、移動時の抵抗を減らす

前述のとおり、収縮根は縦に短くなるだけでなく横にも膨らみます。この膨らみが周囲の土を少し押し広げ、株が動くための小さな隙間を作る可能性があります。

Pützらは実験装置を使い、土中に植物が動くための空間(チャネル)ができる場合と、抵抗を受けながら動く場合を比較しました。その結果、小さなチャネルでも、植物体が土中を移動するときの抵抗を減らすうえで有効でした。[3]
 

つまり、根が周囲の土を少し押し広げて抵抗を減らし、そのあと根自身が短くなって株を引く。力任せにズボッと引きずり込むより、ずっと効率がよさそうです。

ただし、これは他の単子葉植物と模型による研究で、ハオルチアの自生地で実際にどの程度土を動かしているかは未測定です。
 

そのほか提案されている収縮根の働き

収縮根で成長点を地中へ置くことには、火災や動物の食害から守る効果も提案されています。[1] また、クローン状に子株を作る植物では、子株を親株から離す方向へ動かす働きも考えられています。[1][6]

ただし、どちらもハオルチアで直接測定されたものではありません。収縮根そのものはハオルチアやアガベだけでなく、シダ、ソテツ、単子葉・双子葉など広い植物群に見られ、似た環境問題に対して別々の植物がたどり着いた仕組みなのかもしれません。[1]
 

太い根なら、すべて収縮根なのか

PUKUBOOKの投稿では、ハオルチアを抜いたときの極太の根を収縮根として紹介しています。が、太い=収縮根とは限りません。

多肉植物の太い根には、水や養分を蓄える、株を固定する、乾燥後の再生に備えるなど、いろいろな役割があります。
 

論文では太さだけでなく、根の表面の横じわ、外側組織や維管束の圧縮、皮層細胞が横に広がり長さ方向へ短くなっているかなどを見て収縮根を判断しています。

ハオルチアの根っこの写真

実際、Northらが調べたAloe cooperiには太く多肉質な根がありましたが、収縮に特徴的な横じわがなく、収縮域に特徴的な組織差も十分ではなかったため、収縮根とは判定されませんでした。[1]

ハオルチアの太い根の中には収縮根が含まれる。でも、太い根が全部収縮根というわけではないのです。

乾燥と収縮根は、別の「縮む」が混ざりやすい

図説 根の二種類の縮む現象

今回の調査で、かなり大事だと思ったのがここです。PUKUBOOKの図では「太い根が細くなる→隙間ができる→株が引き込まれる」という流れが描かれていますが、論文を読み比べると二つの別の現象が混ざっている可能性があります。
 

株を引く収縮根の短縮

こちらは、根の細胞の形が変わり、横へ膨らみながら長さ方向へ短くなる収縮です。株を土中へ引くのはこっち。
 

乾燥した根のしぼみ

一方、根が水を失うと、根そのものが細くなることがあります。こちらは脱水による受動的な直径方向の縮小です。

現象変化する方向主な結果
収縮根の短縮根の長さ方向株を土中へ引く
乾燥による根の縮小主に根の直径方向根と土の間に空気層ができることがある

似たように「縮む」と表現できますが、仕組みも役割も別物です。
 

乾燥すると、根と土の間に隙間ができるのは本当

乾燥によって根が細くなり、土との間に隙間ができる現象自体は、実際に確認されています。

砂漠に生育するAgave desertiを使った研究では、乾燥させた根と周囲の土へ樹脂を流し込み、根と土の接触状態が調べられました。
 

その結果、乾燥が進むと根の直径が小さくなり、根と土の間に空気の層が形成されました。

容器栽培では根径が最大約34%、自生地では最大約40%小さくなったと推定されています。[5]

乾燥によってできた空気層は、根と土の間の水の移動を大きく制限します。研究では、根と土の境界部分における水の通りやすさが、およそ5分の1になると推定されました。[5]

一見すると、水を吸いにくくなるだけの不利な現象に見えます。
 

しかし、土壌の水ポテンシャルが根より低くなるほど乾燥している場合、根と土が密着していると、根側の水が乾いた土へ移動しやすくなる可能性があります。

根と土の間に空気の隙間ができることで、

  • 根と土の間の水移動が起こりにくくなり、再び土が湿った直後の吸水には不利になる
  • 一方で、根や植物体から乾いた土へ水を失いにくくなる

という効果が考えられています。

 

細い「給水根」は乾季に枯れるのか

PUKUBOOKの図では、乾季初期に「給水根」が枯れると説明されています。これに近い現象は、Agave desertiで確認されています。

アガベには株元から伸びる太い節根と、そこから枝分かれする細い側根があり、この細い側根は論文で「rain roots」と呼ばれています。
 

30日間乾燥させると、水を通す能力は古い節根では低下が2倍未満だったのに対し、若い節根は約10分の1、細い側根では20分の1以下まで低下しました。

さらに細い側根では、乾燥7日後に木部へ空気が入り込む塞栓が起こり、根の長さ方向へ水を運ぶ能力(軸方向の通水性)が約98%低下しました。

↑ここ超大事です。少なくともアガベの細い側根では、乾燥すると水を運ぶ能力が一気に落ちることがあります。
 

7日間乾燥させたあとに再び水を与えると、若い太い節根は大きく回復した一方、細い側根の通水性は乾燥前の約21%、およそ5分の1までしか戻りませんでした。[4]

乾燥が進むと、根の細胞が縮んだり崩れたりして内部に隙間ができ、スベリン化が進み、木部に空気が入ることもあります。つまり、乾燥地の細い吸水根で、乾燥によって通水機能が大きく低下すること自体には根拠があります。
 

ただし、これはアガベの話です。ハオルチアにも同じrain rootsがあることや、細根の枯死が株の沈下を引き起こすことまでは確認できていません。PUKUBOOKの「給水根が枯れる」は、他の乾燥地多肉植物からの類推と考えるのがよさそうです。
 

収縮根は乾季だけに働くわけではなかった

じゃあ、乾燥したときだけ収縮根が働くのかというと、これも違いました。

Northらの研究では、アガベやユッカは温室で定期的に水を与えられていても株が沈みました。[1] Ariocarpus fissuratusでも、乾いた土だけでなく十分に水を与えた条件で収縮が起きています。[6]
 

なので、「乾燥すると収縮根がしぼんで、乾季だけ株が沈む」ではありません。

一方、雨の少ない地域に生える種ほど収縮量が大きい傾向は確認されています。[1] ただし、気温など降水量と一緒に変化する別の環境要因も関係している可能性があります。
 

なので、乾燥そのものがスイッチというより、強い収縮能力が雨の少ない環境への適応と関係している可能性がある、くらいが正確そうです。
 

ハオルチアが地中に埋まるメリット

図説 ハオルチアが半地下で生きられる理由

収縮根一般の意義には、株の固定、吸水、温度環境の調節などが考えられます。

では、半地下性のハオルチアが地中に位置することには、どのような意味があるのでしょうか。
一つずつ深堀りしていきましょう、半地中なだけに。
 

地表の極端な温度の影響を調整する

地表近くは、植物にとって非常に過酷な環境です。

日射を受けた土壌表面は、気温よりはるかに高温になることがあります。小型の多肉植物は地面に近いため、その影響を強く受けます。
 

Haworthia retusaとH. turgidaを調べた研究では、葉の上部表面の最高・最低温度は、周囲の土壌表面温度とおおむね1℃以内でした。[7]

つまり、地表付近のハオルチアの温度は、周囲の土の温度に強く左右されます。
 

この研究で観察された自生株では、H. retusaの株体積の約41%、H. turgidaの約38%が地中にありました。[7]

ただし、ハオルチアが収縮根によって深くなった前後で、株温が何℃変わるのかを比較した研究ではありません。

植物体からの水分損失を抑える可能性

植物体の大部分が地中にあれば、乾燥した空気や風に直接さらされる面積を減らせる可能性があります。

そのため、高温回避や水分損失の抑制は、半地下生活の有力な意義ではあるものの、ハオルチアの収縮根について直接証明された機能とは分けて考えたほうがよさそうですね。

地中に埋まっているのに、どうやって光合成するのか

図説 窓から光を取り込む仕組み

ハオルチアが地中へ潜れるとしても、葉が土の下に入ったら光合成できなくなるように思えます。

そこで重要になるのが、ハオルチアの「窓」です。

葉窓とは、葉の先端などにある透明または半透明の部分です。

その下には比較的透明な貯水組織があり、光合成を行う葉緑組織は、貯水組織の下や周囲に配置されています。

Haworthia truncataの葉内部を、全方向から光を検出する光ファイバープローブで測定した研究があります。

この研究では、H. truncataを、自然状態では葉の上端を除く大部分が地中にある植物として扱っています。[8]

外部から当たった光に対して、葉内部で測定された光量はおおよそ、

  • 葉窓直下、深さ約0.2cm:約72%
  • 葉中央の貯水組織、深さ約1.2cm:約18%
  • 葉基部の葉緑組織、深さ約2.4cm:約7%

でした。

深くなるほど光は大幅に弱くなりますが、葉窓側から入った光が、葉の深部まで届くことは直接測定されています。[8]

つまりハオルチアは、

葉の大部分を地中に置きながら、地表に残した葉窓から内部へ光を取り込む

ことができるわけです。
 

ただし、葉窓が大きいほど内部へ多くの光が届くという単純な関係は確認されませんでした。葉窓の面積だけでなく、葉の厚さ、内部組織の透明度、細胞による光の散乱なども関係すると考えられます。[8]

また、葉窓からは可視光だけでなく近赤外線も入り、葉内部の熱負荷を増やす可能性も指摘されています。[8]
 

写真のハオルチア・クーペリーも収縮根で潜るのか

PUKUBOOKの投稿写真は、Haworthia cooperi var. piliferaとされています。

H. cooperiには、大きな葉窓や発達した貯水組織など、乾燥環境への適応とされる葉の特徴が確認されています。[9] ここは半地下生活の話ともきれいにつながります。

ただし今回確認した論文では、H. cooperiやvar. piliferaそのものに収縮根があるか、年間どれくらい沈むか、雨季と乾季で上下するかまでは直接調べられていません。

論文当時の分類でハオルチア属内の別の4種には収縮根が確認されている。クーペリーには乾燥環境への適応とされる葉窓や貯水組織がある。でも、クーペリー自身の収縮根は今回の論文では未確認だよ。

というところまでです。
 

お家でも「自分から潜る姿」を再現できる?

PUKUBOOKの投稿では、植物自身に潜らせて究極のハビタットスタイルを再現できないか、と考察されています。理屈の上では、収縮根を持つ植物が栽培中に株元を下げることはあり得ます。

ただし、ハオルチアで浅植え・水やり・用土・鉢の深さなどを変えて沈下量を比較した栽培実験は、今回確認した論文にはありません。

「乾燥させれば収縮根が縮んで潜る」と考えて、強い断水をするのはやめた方がよさそうです。

前述のとおり、少なくともアガベでは強い乾燥によって細い側根の通水機能が大きく低下します。ハオルチアで同じ程度に起こるかは未確認ですが、ハビタットスタイルを再現しようとして根を傷めたら本末転倒ですよね。

図説 お家で潜るのを観察するなら

観察するなら、意図的に乾かすのではなく、

  • 根を伸ばせる深さのある鉢を使う
  • 根の発達を妨げにくい用土にする
  • 植え付け時の株元と土の高さに目印を付ける
  • 同じ角度から定期的に写真を撮る
  • 土自体の沈み込みと、株の移動を区別して数か月~年単位で見る

くらいが現実的ですね。
 

まとめ:ハオルチアは本当に「自分で潜る」。ただし仕組みは想像より複雑だった

まとめ パソコンでハオルチアと一緒に勉強する様子

はい、今回もだいぶ深掘りしました。潜る仕組みの記事だけに。

結論として、「ハオルチアが収縮根で株を下へ引く」という話は、おおむね本当です。少なくとも2008年の論文でハオルチア属として扱われた4種では、収縮根に特徴的な構造が確認されています。[1]

ただし、収縮根は乾いて単純にしぼむ根ではありません。根の細胞が横に膨らみながら長さ方向へ短くなり、根の基部そのものを短くして株を引きます。

今回のポイントを3つに絞ると、

  • 論文当時の分類で、ハオルチア属の一部には株を下へ引く収縮根がある
  • 収縮根の短縮と、乾燥で根が細くなる現象は別物
  • 半地下生活は収縮根だけでなく、葉窓・貯水組織・土や岩が作る環境など、複数の仕組みで成り立っている

一方で、クーペリーの細根が乾季に枯れて、その隙間へ毎年株が沈む――という一連のストーリーまでは直接証明されていません。ここは「ありそう」と「確認されている」を分けて考えた方がよさそうです。

それでも、最初に見た「ハオルチアって自分で潜るらしいで」という話の中心部分に、ちゃんと研究上の裏付けがあったのはかなり面白かったです。

PUKUBOOKの投稿を見なければ、ここまで収縮根について調べることもなかったですね。ありがとう!PUKUBOOK!

植物のことを調べるのは楽しいです。これをきっかけに、またハオルチアについて深掘りしていきたいと思います! 潜る仕組みの記事だけに!

今回確認した主な論文

  1. North, G.B., Brinton, E.K. & Garrett, T.Y.(2008)Contractile roots in succulent monocots: convergence, divergence and adaptation to limited rainfall. Plant, Cell & Environment, 31(8), 1179–1189. DOI: 10.1111/j.1365-3040.2008.01832.x
  2. Pütz, N.(1995)A re-evaluation of the mechanism of root contraction in Monocotyledons using the example of Arisarum vulgare Targ.-Tozz. (Araceae). Flora, 190(3), 285–297. DOI: 10.1016/S0367-2530(17)30666-7
  3. Pütz, N., Hüning, G. & Froebe, H.A.(1995)Cost and advantage of soil channel formation by contractile roots in successful plant movement. Annals of Botany, 75(6), 633–639. DOI: 10.1006/anbo.1995.1069
  4. North, G.B. & Nobel, P.S.(1991)Changes in hydraulic conductivity and anatomy caused by drying and rewetting roots of Agave deserti (Agavaceae). American Journal of Botany, 78(7), 906–915. DOI: 10.1002/j.1537-2197.1991.tb14494.x
  5. North, G.B. & Nobel, P.S.(1997)Root–soil contact for the desert succulent Agave deserti in wet and drying soil. New Phytologist, 135(1), 21–29. DOI: 10.1046/j.1469-8137.1997.00620.x
  6. Garrett, T.Y., Huynh, C.-V. & North, G.B.(2010)Root contraction helps protect the “living rock” cactus Ariocarpus fissuratus from lethal high temperatures when growing in rocky soil. American Journal of Botany, 97(12), 1951–1960. DOI: 10.3732/ajb.1000286
  7. Nobel, P.S.(1989)Shoot temperatures and thermal tolerances for succulent species of Haworthia and Lithops. Plant, Cell & Environment, 12(6), 643–651. DOI: 10.1111/j.1365-3040.1989.tb01233.x
  8. Egbert, K.J., Martin, C.E. & Vogelmann, T.C.(2008)The influence of epidermal windows on the light environment within the leaves of six succulents. Journal of Experimental Botany, 59(7), 1863–1873. DOI: 10.1093/jxb/ern105
  9. Nuzhyna, N.V. & Gaydarzhy, M.M.(2015)Comparative characteristics of anatomical and morphological adaptations of plants of two subgenera Haworthia Duval to arid environmental conditions. Acta Agrobotanica, 68(1), 23–31. DOI: 10.5586/aa.2015.006

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