こんにちは、千葉県香取市の多肉屋さんのもじゃさんです!
ハオルチアをはじめ、多肉植物の育て方をいろいろ知りたいので論文からも管理方法のヒントを探したりしています。
ハオルチアは耐寒性・耐暑性ともにとんでもなく強いですよね。
なんで強いのか、という一端が分かる論文がありましたので、内容と考察をシェアします。
本文がウクライナ語だったのでちょっと苦戦しました。
でも、今はいいですね。chatGPTとかdeepLとか超強力なツールがあって。
私が学生の頃はエキサイト翻訳とかそんな感じのものしかなかったので、ちまちま翻訳しながら読んでました。
でも、おかげで論文を読む力は身に付きましたよ(`・ω・´)
ということで、まずは論文の紹介です。
ハオルチアの急激な高温ストレスに対する種特異的応答
論文のサマリーから要点をかいつまんでみました。
気温の上昇は、植物にとって最も一般的なストレス要因のひとつである。ストレス要因に対する植物の適応に関する研究は、依然として極めて重要かつ関連性の高いものである。
H. Attenuata(十二の巻) 、H. limifolia(瑠璃殿)、H. cymbiformis(シンビフォルミス)、H. parksiana(パークシアーナ)の4種を使って実験を行った。
方法は、土の入った鉢に植えられた実験用植物は、空気サーモスタットを用いて40℃と50℃で3時間加熱された。
高温による光合成系への抑制効果は、明るい光によって増強されることが知られているため(Foyer and Harbinson, 1994)、加熱処理中は追加の照明は使用せず自然光下で行われた。
対照群は室温である25℃に保たれた。
実験後、それぞれの植物のフラボノイド含量、過酸化脂質含量、スーパーオキシドジスムターゼ活性、ペルオキシダーゼ活性を計測した。
抗酸化系の酵素活性が上昇すれば、高温への適応が成功したと考えることができる。
引用:https://medicine.dp.ua/index.php/med/article/view/373
というのが、実験の内容です。
高温などの環境ストレスを受けると、植物の中では活性酸素が増えて細胞にダメージを与えます。
それに対応するために、分解する酵素スーパーオキシドジスムターゼが作られるわけです。
ストレスがかかる→酵素活性が上がる→高温耐性が上がるというプロセスがハオルチアの中でも品種によって応答の仕方が異なるのか、適応の度合いが異なるのか、種独特の反応があるのか、などを調べています。
実験に使われたハオルチアについて
論文の中で実験に使われたハオルチアの紹介をします。
論文中では、品種にレア度を付けていましたのでfigも併せてみてみます。
Haworthia cymbiformis (Haworth) Duval
引用:https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:536035-1
論文中の希少度は、保全状況(IUCNレッドリストカテゴリー)によるものだと思いますが、LC:低危険種です。
種名の由来はcymbaは「舟」、iformは「〜形の」とされています。
確かに京の舞とか見ると納得ですね
シンビフォルミス系のハオルチアは割と流通しているので、見つけたらお迎えしてみてください。
論文でも書いていますが、超強いです。
Haworthia parksiana v. Poellnitz.
引用:http://www.llifle.com/Encyclopedia/SUCCULENTS/Family/Aloaceae/22535/Haworthia_parksiana
論文中の希少度は、CR:絶滅寸前となってります。引用元のページにも最も希少な種類と書いてありましたので、この品種は相当レアなのでしょう。
コエル系にも似ている感じで、渋くていいですね。
日本では大型パークシアーナという品種が流通しています。
Hexangulares. attenuata Haworth
引用:https://www.wikidata.org/wiki/Q247612
言わずと知れた十二の巻です。しかし、論文中のレア度はEN:絶滅危惧です。まじ?
現地の原種がそうなのかもしれません。
ホームセンターでもよく見かける品種で、徒長してもわかりづらくとにかく育てやすいので初心者におすすめの硬葉系ハオルチアです。
品種名はアテナータと読みます。同じ読みの品種名はアガベにもあるので、検索するときはハオルチアと付けましょう。
Hexangulares. limifolia Marloth
引用:https://www.researchgate.net/figure/H-limifolia-Marloth-plant_fig1_354686999
これも硬葉系で有名な品種ですね、瑠璃殿です。論文中のレア度はVU:危急となっています。
らせん状に重なる葉っぱはかっこよくて好きです。
ランナーで増えるので、増えるのはゆっくりです。
余談:亜属について
ハオルチアにはいくつかの亜科があり、一緒くたにされることもありますが微妙に違うので覚えておくとたまに役に立ちます。
花の形が違うので以下にその特徴を挙げます。
- Haworthia:花被片は二唇形でその基部が三角から丸みのある形。
- Hexangulares:花被片は二唇形で花筒は曲がり、基部は次第に細まって花柄に続く。
- Robustipedunculares:花被片は放射相称、花筒はまっすぐで、その基部は急に花柄に続く。
実験結果と考察
論文の実験結果を受けて、何が言えるか、というのを品種ごとにまとめました。
品種ごとに特徴があって面白いですね。
H. cymbiformisについて
熱ストレスに対するH. cymbiformisの適応方法は、通常状態では活性酵素、スーパーオキシドジスムターゼ、ペルオキシダーゼ、フラボノイドを蓄積し、ストレスの結果として新たなペルオキシダーゼ酵素を活性化していることが分かった。
酵素などを蓄積しておくことでストレスが突然発生した場合にも迅速に反応でき、細胞の損傷を最小限に抑えることができます。また、色素であるフラボノイドは強力な抗酸化物質として知られており、細胞を酸化的損傷から保護することができます。
H. cymbiformisは、1時間当たりの水分損失が最も高い値を示したが、これは特に、調査した種の中で気孔の数が最も多く、そのため高温での蒸散中の水分損失が高いことと、表皮外側の細胞壁が最も薄いことに起因する(Nuzhyna and Gaydarzhy, 2015)。
ということが言われているので、熱ストレスに弱い形態だからこそ細胞内部で酵素を蓄積することで高い耐暑性を得ることができたと思われます。
H. parksianaについて
H. parksianaでは、特に+40℃でマロンジアルデヒドの量が著しく増加したが、これはおそらく、この種の植物ではわずかな温度上昇では抗酸化系があまり効率的に機能しないためと思われる。
温度ストレスの初期段階において、H. parksianaでは、+40 °Cに比べて+50 °Cでフラボノイドの量がある程度増加したことから、より強いストレスの影響下で、細胞保護のメカニズムが活性化した可能性がある。
H. parksianaでは、防御反応は+50 °Cでのみ活性化され、+40 °Cでは大きな変化は起こらない。
H. parksianaではトリコームと「窓」があることで植物体の過熱を抑えることができると説明できる。
H. limifoliaについて
H. limifoliaの色素系は、温度上昇によって異なる影響を受ける。特に、+40℃まで加温すると、クロロフィル量の減少により光合成がわずかに阻害される。+50℃ではカロテノイドの量も減少した。
H. limifolia植物に高熱療法が急激に作用すると、スーパーオキシドジスムターゼ活性が阻害され、フラボノイドの量が減少する。
H. limifoliaで最も発達しており、気孔の密度が低いことと合わせて、萎凋1時間当たりの水分損失が最も少ない。
乾燥耐性と高熱下での光合成系の状態は、抗酸化システムの作用機序よりも構造に依存していると考えられる。
40℃で短期加熱すると、クロロフィルとカロテノイドの量が増加する
H. attenuatについて
H. attenuataを40 °Cで短期加温すると、クロロフィルとカロテノイドの量が増加した(図2a)。
50 °Cでは、カロテノイドの量だけがコントロールに比べて増加した。
このような指標は、この種の植物の温度上昇に対する適応性がかなり高いことを示している。
急激な温度上昇の結果としてペルオキシダーゼ活性の上昇が観察された。
他の亜科の2種に比べ、抗酸化系のレベルでは急激な温度変化によく適応している。
総括
H. cymbiformisとH. attenuataは他の2種よりも耐熱性が高い。急激な短期高熱は、ハオルチア属の種によって抗酸化系に異なる影響を与える。Haworthia亜属の研究種は、Hexangulares亜属の種よりも温度ストレスに強い光合成系を持つ。
干ばつ耐性はH. limifoliaで最も高く、H. cymbiformisで最も低かったが、異なる亜属の他の2種は同程度の干ばつ耐性を示した。干ばつ耐性と高熱下での光合成システムの状態は、抗酸化システムの作用機序よりも解剖学的構造に依存している。
と論文では総括しています。
この論文では最終的な反応を見て、耐暑性や乾燥耐性が強いね、ってところまでだったので、今後の研究でどの遺伝子がハオルチア特異的な反応をしていて、こういう情報伝達経路や代謝経路を得て防御機構が働いているね、っていうのが分かるようになればいいなと思います。
CAM植物のモデル植物であるカランコエでこれに似た反応は解明されていないのかな?
それが分かったところで育て方には関係ないでしょ!
とお思いでしょう。
そんなことないですよ。
代謝経路や情報伝達経路が分かると、そこで要求されるアミノ酸とかミネラルとかが分かってくるのです。
ということは、そのアミノ酸やミネラルを施肥としてタイミングよく与えればより耐暑性や耐乾性を上がるかもしれない。
というように栽培に活かせるのです。
論文の結論であるように「解剖学的構造に依存している」という場合は、その植物独特の形状によるものだから、栄養を与えたところでしょうがないのですが、どの形状が、というのを深堀していくと交配の時にめっちゃ強いのを作るヒントになるかもしれないです。
論文を読むのは面白いですよ。
これから余力のある時は、読んだ論文をシェアしようと思います。
感想とかご意見とか聞かせていただけるともじゃさんのやる気につながります。
ラインからメッセージくれると大変喜びますヾ(*´∀`*)ノ
→もじゃさんにラインでメッセージを送ってみる
最後までご覧いただきありがとうございました!
コメントを書く