オーロラの葉挿しで先祖がえりしやすい理由|斑入りが消えて虹の玉に戻る仕組みを考察

オーロラの葉挿しで先祖がえりしやすい理由|斑入りが消えて虹の玉に戻る仕組みを考察

こんにちは、もじゃさんです。

セダムのオーロラって不思議な色合いでいいですよね、あれ好きなのですごく増やしてニヨニヨしたいのですよ。

でも、あれ葉挿しがなかなか上手くいかないんですよね。

ほら↓

オーロラ葉挿し 成長過程01

体感でちゃんと親のようにきれいな色合いになっているのは10%くらいでしょうか?

斑入りになっていても、まだら模様じゃなくてくっきり分かれていたり、べたっと白い糊斑になっていたりと様々です。

なんでこんな風になるんですかねぇ。。。不思議ですねぇ。。。

感覚的には分かっているのですが詳しく説明しろと言われるとちょっとあやふやなんで、多肉植物の葉挿しの仕組みと斑入りに関する論文を色々読んで、お勉強しました!

オーロラそのものの細胞層や遺伝子を解析した論文を見つけたわけではないので、あくまで考察としてとらえてくださいませ。

でもでも、オーロラの葉挿しが上手くいかない理由を、葉挿しの仕組みと斑入りになる仕組みから知っておくと、オーロラの正しい増やし方が腑に落ちますよ。

という事で、説明していきましょう!

そもそもオーロラってなんぞ?


オーロラの概要

オーロラの基本情報

植物名
オーロラ
学名
Sedum rubrotinctum cv.‘Aurora’
英名
Aurora, Pink Jelly Bean
科名
ベンケイソウ科
属名
セダム属
原産地
種としてはメキシコ、オーロラ自体は園芸品種扱い
流通名
セダム・オーロラ、虹の玉錦、斑入り虹の玉、ピンクジェリービーン、宇宙錦
成長型
春秋型
花言葉
枯れることのない愛(セダム)

オーロラ
オーロラの花のイメージ

一般には、虹の玉で葉っぱ全体にグラデーション状に斑の入ったタイプとして流通している園芸品種です。セダムだけあって基本的には丈夫で育てやすくよく増えます。

しかし、やはり斑入りなのでほどよく日光に当てないと徒長しやすく、あまり強い日光に当てすぎるとダメージを受ける繊細さが少しあります

オーロラの独特な斑入りになる理由を実際に観察してみる

マダラともグラデーションとも言えない何とも不思議な感じで斑入りになっているのが魅力ですよね。この斑の入り方はちょっと難しい言葉でいうと「周縁キメラ型」の色素変異の仕組みで説明しやすいのです。

キメラというのはドラ●エに出てくるハゲワシみたいなやつでも、ファイナル何とかに出てくるライオンの頭と蛇の尻尾持ってるやつでもないのですが、意味合いはあれです。

色んなものが混ざった状態、という意味でキメラという言葉が使われています。

どういうことかというと、多肉植物も含まれている被子植物は茎の先端にある成長点は複数の層に分かれて作られています。通常は大きく分けると、外側の表皮を作るL1層その内側の葉肉を作るL2層、そして中心部を作るL3層の3層構造になっています。

で、変異が外側の表皮を作る層に様々な分布をして入るとオーロラになると考えられます。

実際にオーロラの葉を輪切りにし観察してみました、比較用として虹の玉も同様に観察しています。

一番外側には赤い色素が溜まり、中間層みたいなところが不均一に白くなっています。これが独特の模様を作り出します。対して虹の玉での葉の中間層と中心部は全部緑ですね。


何となく外側の表皮を作る層(L1、L2層)と、内側の中心部を作る層(L3層)の3層構造をお判りいただけたでしょうか?この構造をいったんミルフィーユ構造とします。

で、このミルフィーユ構造を綺麗に維持するのがオーロラを増やすポイントです。

ちなみに、赤い色素は紫外線などから身を守る意味合いもある事から一番外側に蓄積されるようです。ピンク色にするには適度に日光に当てるのがよろしいかと思います。

じゃあ、どうやって増やすのが良いの?

オーロラの増やし方で先祖返りしないコツ

結論:挿し穂で脇芽を増やしまくれ。

オーロラおススメ増やし方

↑の写真のように赤で示したあたりでカットして、葉2枚と茎を残し挿し穂を大量に作ります。

青文字で「やらない」と示したあたりは緑の割合が増えてきて、先祖返りしだしていますのでそこから脇芽を出してもきれいなオーロラにはならない確率が高いです。

そんなわけで、きれいな葉っぱのある部分で大量に挿し穂を作り脇芽を2つ取って増やすのが最適解と思います。

個人的には葉挿しでいろんな表現型を集めるのも楽しくて好きです。

オーロラ葉挿し 成長過程02


ということで、ここからは、なんでこんなことになるのかを説明していきます。

オーロラの葉挿しはなぜうまくいかないのか

まず、多肉植物の葉挿しの仕組みは、葉が本体から離れた刺激で切り口付近の細胞が分裂してカルスや不定組織を作り、葉から作られる植物ホルモンを受けて不定根不定芽を発生させて個体を再生する、というものです。(Gorelick 2015)

で、斑入りの場合に何が起きるかというかというと、ここがちょっと面白いのです。

セントポーリアの論文が詳しく調べてくれているのですが、葉の組織から芽が出るときは、L2層(表皮のすぐ下の層)の細胞が一番分裂しやすいんですよ。(Nabeshima et al. 2017)

つまり葉挿しで新しい芽ができるとき、その芽のもとになる細胞の塊は、ほぼL2層から作られてしまうことが多いのです。

ここで、さっきの輪切りの観察結果を思い出してください。オーロラの中間層(L2層)は、緑の細胞の中に白い変異細胞が混ざった「不均一に白い」状態でしたよね。

これね↓


もし、このL2層の「完全に白い変異細胞」だけで芽が再構成されると、今度は葉緑体が全くない「真っ白(またはピンク)」な芽(ゴースト)になって育たずに枯れてしまいます。

じゃあ、なぜ虹の玉(緑)に戻るものが多いのかというと、バラバラになったカルスの塊のなかで、L2層の中に残っていた「正常な緑の細胞」や、さらに奥のL3層(緑)の細胞が、植物としての生存本能(葉緑素を作らなきゃ!)で主役になってんがっと成長点を作ってしまうから、と考えられます。

いずれにせよ、L1・L2・L3が綺麗に重なっていたミルフィーユ構造が一度バラバラに崩れてしまうため、親株と全く同じバランスの成長点を引き継ぐことが難しくなるわけです。

図にすると、葉挿しはこんな流れです。

親株の成長点をそのまま受け継ぐのではなく、葉の切り口付近から新しい芽と根を作り直すイメージです。

葉挿しに綺麗な斑が入りにくい理由の図説


カルスや不定細胞はミルフィーユ構造を含む切り口付近の細胞が、バラバラに分裂して塊になったものなので、表皮層がきれいに層状を保って塊にはなっていないのです。

そのため、先祖がえりをして虹の玉に戻るものや、真っ白になってしまうもの、あるいは斑とそうでない部分がくっきり分かれる区分キメラになるものが多くなるというわけです

ちなみに、同じ論文で花柄(花茎)を調べると、今度は逆でL1層(表皮の細胞)が爆発的に分裂して、L1・L2が一緒に引っ張られるように芽が作られるとのこと。複数の層が同調して綺麗に芽になるので、ミルフィーユ構造がそのまま引き継がれます。

これがそのまま「じゃあ、脇芽や挿し穂ならなんで綺麗に増えるの?」という話につながるのですが、それは次のセクションで!

じゃあなんで脇芽は大丈夫なの?

先ほど、オーロラを上手に増やすコツは脇芽をたくさん作れと結論付けましたが、その理由は脇芽の場合はきれいにミルフィーユ構造を維持できるからなんです。

葉挿しのカルスとは違って、きれいに三層構造をもって成長点が押し出されるように作られるから新芽が親株とほぼ同じ形質を持って出てくるのです。

脇芽や挿し穂に斑が残りやすい理由の図説

ただし、茎にも変異の分布に偏りはあったり、成長していくうえで斑入りは不利なので葉緑素を増やそうとする動きがあるように見えるので、カットする位置をよく見て挿し穂を作るのが良いと思います。

まとめ

ということで、ざっくりまとめです。

  • オーロラの葉挿しで先祖返りが多いのはカルス化で増えるためミルフィーユ構造を維持して個体を再生できない確率が高いため。
  • オーロラを親株の形質を綺麗に継承させて上手に増やすには、綺麗な葉のある所で挿し穂をたくさん作り、脇芽を2つ取って増やす。

ちなみに、植物の種類は違うのですが、葉脈に沿ってくっきりと白い美しい筋が入るゼブラプラントみたいな斑入りは遺伝子に「そういう風に作りなさい」とプログラムされているので、そのプログラムに変異が入らない限りは葉挿しだろうが挿し穂だろうが実生だろうが維持されます。

斑入りも仕組みを知ればちゃんと増やせそうですね!

この記事があなたの多肉ライフを豊かにするきっかけになれば幸いです。

最後までご覧いただきありがとうございました。

参考文献・参考資料

  1. Root Gorelick. “Why Vegetative Propagation of Leaf Cuttings is Possible in Succulent and Semi-Succulent Plants.” Haseltonia, 20: 51–57, 2015.
  2. Raisa Aone Cabahug, Soon-Yil Soh, Sang Yong Nam. “Growth of Crassulaceae Succulents as Influenced by Leaf Cutting Type and Planting Position.” Flower Research Journal, 24(4): 255–263, 2016. DOI: 10.11623/frj.2016.24.4.03
  3. Raisa Aone Cabahug, Soon-Yil Soh, Sang Yong Nam. “Effects of Auxin and Cytokinin Application on Leaf Cutting Propagation in Echeveria Species.” Flower Research Journal, 24(4): 264–273, 2016. DOI: 10.11623/frj.2016.24.4.04
  4. Jae Hwan Lee, Sang Yong Nam. “Vegetative Propagation of Six Pachyphytum Species as Influenced by Different LED Light Qualities.” Horticultural Science and Technology, 41(3): 237–249, 2023. DOI: 10.7235/HORT.20230022
  5. 細川宗孝. 「花の模様形成メカニズム」『京大農場報告』Vol.23, 2014.
  6. Tomoyuki Nabeshima et al. “Histogen Layers Contributing to Adventitious Bud Formation Are Determined by their Cell Division Activities.” Frontiers in Plant Science, 2017.
  7. Matin Kazemzadeh Bahnamirei et al. “Innovative in vitro shoot regeneration in variegated snake plant (Sansevieria trifasciata cv. Laurentii) through utilization of light exposed single-node rhizome tissue.” Scientific Reports, 2025.

※本記事は、セダム属オーロラそのものを対象にした実験論文に基づくものではありません。多肉植物の葉挿し研究、ベンケイソウ科多肉の栄養繁殖研究、斑入り植物・周縁キメラ植物に関する既存研究と葉の観察をもとに、オーロラの葉挿しで先祖がえりしやすい理由をもじゃさんが園芸的に考察したものです。

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