カンテがエケベリアじゃなくなりました!エケベリア属から44種が新しい属に分類されたのです

カンテがエケベリアじゃなくなりました!エケベリア属から44種が新しい属に分類されたのです

はい、まいど、もじゃさんです。
 

ちょっと聞いてください。

エケベリアの中でも、ひときわ美しい白い葉っぱで人気のエケベリア・カンテ(Echeveria cante)。

あの白き女王カンテが……。

エケベリアじゃなくなりました!!
 

いや、正確には、エケベリア属から切り離して、新しい属に分類するという論文が発表されたんです。

まぁカンテだけではないのですが。

ギビフローラやサブリギダなど、これまでエケベリア属として扱われていた植物を中心とする、44種が新属Carrilloa(カリロア)にまとめられました。

ということは、皆さんが大切に育てているエケベリアの中にも、新しい分類ではエケベリアではなくなった子がいるかもしれないということです。

「いやいや、今までエケベリアだったのに、突然違う属になるってどういうこと?」

って思いますよね。

もちろん、ある日突然カンテが別の植物に進化したわけじゃあない。

変わったのは植物そのものではなく、私たち人間が付けている「分類」だけなのです。

 

そもそもエケベリアとは何なのか、という根本的な問題にまでつながってくるんです。

さらに、今後の多肉植物の販売や購入にも、少なからず影響してくるかもしれません。
 

今回は2026年9月に発表された論文をもとに、なぜカンテがエケベリアから分離されたのか、新属カリロアとは何なのか、そして育てている人やこれから購入する人にはどんな影響があるのか、もじゃさんなりに掘り下げてみたいと思います。
 

そもそもエケベリアとは?

エケベリア属のタイプ種Echeveria coccineaとロゼット型のEcheveria elegansの姿の比較

さて、今回の話を理解するために、まず考えてみたいことがあります。

そもそも、何をもってエケベリアというのでしょうか?
 

ちょっと考えてみてください。

皆さんは「エケベリア」と聞いて、どんな姿を思い浮かべますか?

おそらく、肉厚の葉っぱがバラの花のように重なった、美しいロゼット状の多肉植物を想像する人が多いのではないでしょうか。

確かに、エレガンスやラウイ、桃太郎などは、いかにもエケベリアらしい姿をしています。
 

では、あの特徴的なロゼットを形成する植物がエケベリアなのでしょうか。

実は、そうじゃないんです。

グラプトペタルムやパキフィツムなどにも、似たようなロゼットを形成する種類が存在します。
 

逆に、エケベリアの仲間にも、茎を長く伸ばしたり、枝分かれしたりする種類がいます。 

つまり、見た目がエケベリアっぽいからといって、必ずしもエケベリア属とは限らないんですね。
 

エケベリア属の基準はコッキネア

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エケベリア属(Echeveria)は、1828年に植物学者ドゥ・カンドールによって発表された属です。
 

そして、この属名の基準となる植物が、Echeveria coccinea(エケベリア・コッキネア)です。

ここでいう基準とは、分類学で「タイプ種」と呼ばれるものです。
 

植物の属名には、その名前を結び付ける基準となる種が決められています。

エケベリア属の場合、それがコッキネアというわけです。
 

でも、このコッキネアは、ぎゅっと詰まった花のようなロゼットのエケベリアとは違います。

茎が伸びたり、枝分かれしたり、毛が生えていたりするんですね。
 

「えっ、これがエケベリアの基準なの?」

と、初めて見る人は少し驚くかもしれません。

ただし、タイプ種はその属を代表する理想的な姿という意味ではありません。
 

例えば、今後エケベリア属がいくつかの属に分けられるとしても、コッキネアを含む側にエケベリアという属名が残る、という名前の基準になります。
 

では、エケベリア属にはどんな植物が含まれてきたのでしょうか。
 

従来の形態的な特徴を簡単に整理すると、

  • 多肉質の葉を持つ多年草や低木状の植物
  • 葉は互い違いに付き、ロゼット状になるものが多い
  • 花は基本的に5枚の萼片と5枚の花弁を持つ
  • 花弁の基部はつながり、筒状から鐘状の花冠になることが多い
  • 雄しべは10本、心皮は5個

といった特徴があります。

ただし、これらは伝統的なエケベリア属に見られる一般的な特徴であって、この条件さえ満たせば必ずエケベリア属になるというものではありません。
 

実際、今回のカリロアにも多くの特徴が共通しています。
 

じゃあなんで分ける必要があるのよ、ってなりますよね。

それは植物の進化の歴史を調べる必要があるんです。
 

DNAを調べたら、「あれ?これ違くね?」ってなったの巻

植物の分類は、昔から葉や花、茎の形状などを比較することで行われてきました。

もちろん、今でもその考え方はとっても大事です。

しかし、DNAを使った分子系統解析が進んだことで、外見だけでは分からなかった植物同士の関係が見えてきました。
 

そして、エケベリア属の中でも違いが見つかりました。

同じエケベリア属に分類されていたのに、進化の歴史をたどると単一の共通祖先じゃなかったのよ。

例えるなら、見た目や服装が似ているから親戚だと思っていた人たちが、家系図を調べてみたら実は違う家系だった、という感じでしょうか。
 

植物でも、似たような環境に適応した結果、別の系統なのに似た特徴を持つことがあります。

そのため、現代の植物分類学では、見た目に加えて進化的な系統関係も重視されます。

そこで、エケベリア属も系統関係をもとに見直そうという研究が進められてきました。

今回のカンテを含む44種の分類変更も、その流れの中で行われたものなんです。
 

エケベリア44種が新属「Carrilloa(カリロア)」に!

Echeveria ser. Gibbifloraeを中心とする44種が新属Carrilloaとして提唱された分類変更の概要図

今回のきっかけとなったのは、2026年9月28日にオンライン公開された論文です。

Richness and endemism patterns of the new genus Carrilloa (Crassulaceae) for Mexico and Guatemala

日本語にすると、「メキシコとグアテマラにおける新属カリロア(ベンケイソウ科)の種の豊富さと固有種の分布パターン」といったところでしょうか。

メキシコ国立自治大学の研究者らによる研究で、植物学の学術誌『Botanical Sciences』に掲載されました。

この論文では、これまでエケベリア属の中の Gibbiflorae(ギビフローラエ)というグループとして扱われていた植物を中心に、44種を独立したCarrilloa属として整理することが提唱されています。

代表的な種類を挙げると、次のようになります。

これまでの学名提唱された新学名
Echeveria canteCarrilloa cante
Echeveria gibbifloraCarrilloa gibbiflora
Echeveria subrigidaCarrilloa subrigida
Echeveria giganteaCarrilloa gigantea
Echeveria fulgensCarrilloa fulgens
Echeveria rubromarginataCarrilloa rubromarginata

というわけで、カンテはカリロア・カンテ、ギビフローラはカリロア・ギビフローラという名前になるんですね。

うーん、長年慣れ親しんできた名前なので、どうにも違和感があります。
 

ちなみに、Carrilloaという名前は、メキシコのベンケイソウ科植物の研究に貢献してきたPablo Carrillo Reyes博士にちなんで名付けられています。
 

ここで注意したいのは、新属が提唱されたことと、世界中の植物図鑑やデータベースがその分類を一斉に採用することは別だという点です。

しばらくは、旧来のエケベリアという名前も併用されると思います。

カンテたちがエケベリアから分けられた3つの理由

Carrilloaがエケベリア属から分けられた根拠を分子系統・葉の基部・花の構造で示した図

今回の論文では、単に「見た目が違うから」という理由で新属を作ったわけではありません。

大きく分けると、DNAによる系統関係、植物の形態、染色体の特徴という3つの根拠があります。
 

① DNAから見ると別のまとまりだった

最も重要な根拠になったのが、分子系統解析の結果です。

これまでに行われた複数の研究で、ギビフローラエの仲間は、エケベリア属のタイプ種であるコッキネアを含む系統とは離れた位置に現れていました。

さらに、別の属として提唱されたBalbinaea(バルビネア)などと近い関係にあることも示されています。
 

特に2026年の先行研究では、葉緑体と核DNAの5領域を用いた解析によって、ギビフローラエが独立したまとまりになるという結果が得られています。

こうした系統関係から、研究者らは、従来のエケベリア属に含めておくよりも、新しい属として扱う方が進化の歴史を反映できると考えたわけです。
 

② 葉や花の構造にも特徴があった

カリロア属に分類された植物には、形態的にもいくつかの共通点があります。
 

例えば、ロゼットは直径15〜80cmと比較的大きく、葉は幅広で平たいものが多く見られます。

また、葉の付け根が葉柄のように細まり、その両側に薄い膜状の翼ができることがあります。
 

そして特に目立つのが、花の構造です。

大型の円錐状〜集散状の花序を付け、花序の長さが1m近くになるものもあります。

花弁にははっきりした稜があり、花柱は赤色〜暗紫色になることが特徴として挙げられています。
 

ただし、これらの特徴がすべての種に完全に当てはまるわけではありません。

似た特徴を持つ別のグループも存在するため、複数の形質を組み合わせて判断する必要があります。
 

③ 染色体にも違いが見られた

さらに興味深いのが、染色体の特徴です。

過去の研究では、ギビフローラエの調査済みの大部分で、基本染色体数がx=27と報告されています。

一方、バルビネア属ではx=12とされています。
 

基本染色体数というのは、単純に細胞の中に27本の染色体がある、という意味ではありません。

実際には倍数性などによって染色体数が異なるものもあります。

それでも、こうした違いが、系統関係を考える材料になっているんですね。
 

このように、DNA、形態、染色体など、いくつもの証拠を組み合わせることで、今回の新属が提唱されました。
 

カリロア44種は、さらに南方系と北方系に分かれる

Carrilloa44種の南方系Meridionales23種と北方系Septentrionales21種のメキシコ・グアテマラ分布図

新属カリロアは、さらに2つのグループに分けられています。

一つは南方系のMeridionales(23種)。

もう一つは北方系のSeptentrionales(21種)です。

簡単にいうと、メキシコ中央部から南側に分布する仲間と、中央部から北西側に分布する仲間ですね。

特徴南方系北方系
種数23種21種
主な分布メキシコ中央〜南部、グアテマラメキシコ中央〜北西部
花の長さ1.0〜1.8cm1.2〜2.4cm
蜜腺鱗片の色白・黄・透明状赤・黄・橙・桃

 
ちなみに、カンテは北方系、ギビフローラは南方系に分類されています。

ただし、この2つのグループも、すべての種類がきれいに分かれているわけではありません。

特にややこしいのが、ギビフローラとフルゲンスです。

ギビフローラは、過去のDNA解析によって系統上の位置が異なる結果になっており、今回の論文では花の形や分布なども考慮して南方系に入れています。

フルゲンスにいたっては、調べた標本によって南方系に入ったり北方系に入ったりしています。

これは、フルゲンスとして扱われてきた植物の中に、複数の異なる種が混ざっている可能性を示しています。

つまり、今回の分類は新しい整理の枠組みではありますが、まだすべてが解明されたわけではないんです。
 

44種のうち42種がメキシコ固有種だった!

Carrilloa44種のうち42種がメキシコ固有種であることと種数・固有性CWEの分布を示す地図

今回の論文は、分類だけでなく、カリロア属がどんな地域に分布しているのかについても詳しく調査しています。

研究者らは植物標本館やGBIF、iNaturalistなどの情報をもとに、1,431件の位置情報付き分布記録を整理しました。
 

そして、カリロア属として認めた44種のうち、42種がメキシコ固有種であると報告しています。

なんと95.45%です。
 

残る2種はグアテマラにも関係していて、C. gudeliana はメキシコとグアテマラの両方に、C. steyermarkii はグアテマラにのみ分布するとされています。

また、地域別に見ると、メキシコ南部のシエラ・マドレ・デル・スル山地や、中央部のメキシコ横断火山帯に多くの種類が記録されています。

特にメキシコ横断火山帯の中央部では、比較的狭い範囲に複数の種類が集中していました。

一方、非常に狭い地域にだけ分布している種は、メキシコ西部などに集中する傾向があります。

つまりカリロア属は、メキシコという地域の中でも、山地や火山帯などの複雑な環境と深く関係する植物群なんですね。

こうした分布の特徴は、植物の進化や多様化を研究するための重要な手掛かりになります。

ただし、分布記録が少ない種類では、実際に生えている場所が少ないのか、それともまだ十分に調査されていないだけなのか、判断が難しい場合もあります。
 

今回の研究でも、そうした記録の偏りが結果に影響する可能性が指摘されています。
 

でも、今回で確定じゃないものミソ

さて、ここまで読むと、エケベリアから44種が分離されて、分類がきれいに整理されたように感じるかもしれません。

ところが、そうでもないのよ。

今回の研究では、過去のDNA解析結果を利用していますが、44種すべてを新たに解析したわけではありません。

また、標本が非常に少ない種類もあり、十分な比較が難しい場合があります。

さらに、フルゲンスのように種の境界そのものが曖昧なものや、ギビフローラのように系統上の位置がまだ完全には確定していないものもあります。

植物の分類がいかに複雑で、研究が大変なのがうかがえますね。

やっぱりというかなんというか、今回の論文では44種のほかに、まだ正式に名前が付いていない新種と考えられる植物の存在も指摘されているんです。まあそうよね。

今後の研究によっては、カリロア属に含まれる種の数やグループ分けが、さらに変わる可能性もあるというわけです。
 

じゃあ、カンテの育て方も変わるの?

ここで気になるのが、栽培への影響です。

今までエケベリアだったカンテが、カリロアという新しい属になった。

じゃあ、これまでの育て方も変えた方がいいの?

ということなんですが……。
 

もちろん、名前が変わったという理由だけで、育て方を変える必要はありません。

カンテはカンテです。
 

人間が付けた名前が変わったからといって、植物の性質が突然変わるわけではありません。

そもそも今回の論文は、分類と地理的分布についての研究です。

日照条件や水やり、耐寒温度、用土などを比較した栽培実験ではありません。
 

ですから、新属になったという情報だけで栽培方法を変更する必要はないんですね。

そして、カリロア属に分類された植物が、すべて同じ環境で育つわけでもありません。

原産地の標高や気温、雨の降り方、生育環境は種によって異なります。
 

そのため、栽培方法を考えるときには、属名だけで判断せず、それぞれの種がどんな環境で生きているのかを調べることが重要です。
 

育てている植物のラベルはどうする?

栽培している植物の名札や管理台帳については、今回提唱された新学名を採用するなら、新旧両方の名前を残しておくのがよいと思います。

例えばカンテなら、

Carrilloa cante(旧 Echeveria cante)

という感じです。

過去の栽培記録や文献を調べる際には、旧学名で検索した方が情報を見つけやすい場合もあります。

余談ですが、いまだにドリミア・イントリカータがなじまなくてシゾバシス・イントリカータと読んでしまいますw

学名を更新するときには、それまでの名称や購入時のラベルを消してしまうより、履歴として残しておいた方が便利だと思います。

 

これからカンテを買う人には、どんな影響があるの?

さて、ここからは、これから多肉植物を購入する人への影響について考えてみたいと思います。

栽培方法そのものが変わらなくても、販売や購入の場面では少し注意したいことがあります。
 

特に学名が変更された直後は、植物の名前が混在しやすくなるからです。

① 「エケベリア・カンテ」と「カリロア・カンテ」が並ぶかもしれない

例えば、多肉植物の販売店やネットショップでカンテを探したとします。

あるお店では「エケベリア・カンテ」。

別のお店では「カリロア・カンテ」。

さらに別のお店では「Echeveria cante(Carrilloa cante)」。

こんなふうに、同じ植物なのに違う名前で販売されることが考えられます。

もちろん、新分類を採用するかどうかは、販売店や植物データベースなどによって異なることがあります。

そのため、名前が違うからといって、必ずしも別の植物というわけではありません。

逆に、植物を探すときには、旧学名と新学名の両方で検索してみるとよいでしょう。

例えばカンテなら、

「エケベリア カンテ」「Echeveria cante」「Carrilloa cante」「カリロア カンテ」

といった名前です。

また、名前の表記が変わったからといって、以前から流通しているカンテが突然別品種になるわけではありません。

購入する際は、学名だけではなく、植物そのものの姿や来歴も確認したいところです。

② 新しい属だからといって、希少価値が上がるわけではない

これ、個人的には特に気になるところです。

「新属カリロア!」

なんて書かれていると、なんだか新しく発見された珍しい植物のように感じませんか?
 

でも、今回の話は、既存の植物を新しい分類体系に整理したということです。

植物が新たに発見されたわけでも、生産数が突然減ったわけでもありません。
 

ですから、カリロア属になったという理由だけで、希少価値が上がるわけではないんですね。

もちろん、カリロア属には自然界での分布が非常に限られている種も存在します。
 

しかし、野生での分布が狭いことと、園芸市場で流通している株の数が少ないことは別問題です。

例えば、自然界では限られた地域にしか分布していなくても、長年にわたって栽培・繁殖されている植物なら、市場では比較的手に入りやすいこともあります。

逆に、広い地域に分布していても、栽培流通が少ないものは入手しにくい場合があります。

植物の価格は、流通量や需要、株の大きさ、状態、由来など、さまざまな要因によって変わります。

今回の分類変更が価格にどの程度影響するのかは、この論文からは判断できません。
 

なので、「新属だから高価です!」という説明があったとしても、その理由だけで希少な植物だと判断しない方がよいでしょう。

③ 名前よりも、正しく同定された植物かどうかが重要

今回の論文で、もう一つ興味深かったのが、植物の誤同定に関する問題です。

特にフルゲンスは、過去に多くの異なる植物が同じ名前で扱われてきたことが指摘されています。
 

これは、植物を購入するときにも関係してくる話です。

例えば「エケベリア・フルゲンス」という名前で販売されていたとしても、必ずしも現在の分類でいう Carrilloa fulgens と正しく同定されているとは限りません。

同じような姿をした近縁種が存在するため、葉の色や形だけでは区別が難しい場合もあります。

もっとも、これはフルゲンスに限った話ではありません。

多肉植物の世界では、古くから使われている園芸名や、由来のはっきりしない名前で流通している植物もあります。
 

ですから、学名にこだわって植物を購入する場合は、名前だけではなく、できる限り元の株の由来や花の特徴なども確認した方がよいと思います。

特に原種を収集している人にとっては、学名の表記以上に、その植物が本当にその種なのかという点が大切になってきます。
 

④ 交配種を買う場合は、もう少し複雑なんです

カンテやギビフローラなどは、園芸的にも魅力のある植物です。

そのため、これらを交配親として使った園芸品種や交配個体についても気になるところです。
 

例えば、今までエケベリア同士の交配だと考えられていた組み合わせが、今回の分類を採用すると、カリロア属とエケベリア属の交配という扱いになる場合も考えられます。
 

ただし、ここは少し慎重に考える必要があります。

親となる原種の属名が変わったからといって、既存の交配種の学名や園芸品種名を、すべて自動的に変更できるわけではありません。
 

雑種の命名には別の取り扱いが必要になる場合があり、そもそも交配親の同定が正しいかどうかという問題もあります。

そのため、交配種を購入する場合には、販売名だけでなく、交配親の学名や記録がどこまで確認されているかも参考になります。
 

また、今回の分類変更によって、従来交配できた組み合わせが急に交配できなくなるわけでもありません。

属名は人間が付けた分類上の単位であって、植物の生殖能力そのものを変えるものではないからです。
 

⑤ 原産地や由来にも目を向けてほしい

今回の論文では、44種のうち42種がメキシコ固有種だと報告されています。

中には、非常に狭い地域でしか記録されていない植物もあります。

だからこそ、原種を購入する場合には、植物の由来にも目を向けてほしいと思います。

ただし、野生で珍しいから価値が高い、という話ではありません。

植物によっては、現地の生息環境や個体群の維持について配慮が必要になることがあります。

購入する場合は、適切に増殖された栽培株なのか、販売者が由来を説明できるかなども判断材料にするとよいでしょう。

もちろん、由来が分からない植物がすべて不適切なものというわけではありません。

ただ珍しいという宣伝文句だけで購入を決めるよりも、その植物がどのように流通してきたのかを知ることには意味があると思います。

結局、購入するときは何を確認すればいい?

これからカンテなどを購入する場合、まず確認したいのは、新旧どちらの学名で販売されているのか、そしてその名前が指している植物が何なのかということです。

古い学名で販売されているから間違い、というわけではありませんし、新しい学名が書いてあるから必ず正しく同定されている、というわけでもありません。

特に原種や交配親の情報にこだわる場合は、学名に加えて、植物の特徴や入手元、繁殖の来歴なども参考にしたいところです。

そして、新属になったという説明だけで、高価な価格設定や希少性を判断しないこと。

今回の分類変更は植物の進化的な関係を整理するためのものであって、植物の品質や市場価値を保証するものではありません。
 

逆に言えば、名前が変わったからといって難しく考えすぎる必要もありません。

これまでと同じように、植物そのものをよく観察して、納得できる株を選べばよいと思います。

新しい分類は、植物を知るための情報が一つ増えた、くらいに考えるとよさそうですね。
 

エケベリアの分類は、これからも変わっていく?

今回のカリロア属の独立は、実は突然始まった話ではありません。

エケベリア属では以前から分子系統解析が進められていて、これまでの分類では進化的な関係を十分に表現できないことが分かってきました。
 

すでにChazaroa(チャザロア)属やBalbinaea(バルビネア)属など、従来エケベリアとして扱われてきた植物群を別属に分ける研究も発表されています。

ということは、今後もエケベリアの分類が変わっていく可能性はあるわけです。

もっとも、植物は最初から自分たちで「私はエケベリアです」「私はカリロアです」と名乗っていたわけではありません。人間が、共通する特徴や進化の歴史を調べて、分かりやすいように名前を付けているんですね。

そして、新しい発見によって分類に矛盾が見つかれば、それを見直していく。

科学というのは、そういうものなのだと思います。

個人的には、こういう話がとても面白いんですよね。

 

そして今回、何より面白いと思ったのは、カンテがエケベリアじゃなくなったということ以上に、

「そもそもエケベリアとは何なのか?」

という、今まで当たり前だと思っていた分類そのものが、研究によって見直されていることです。
 

これは単なる名前の変更以上に、興味深い話だと思います。

まとめ:エケベリアじゃなくなっても、カンテはカンテ!

大きなカンテ

今回は、カンテをはじめとする44種を新属Carrilloa(カリロア)として扱う分類を提唱した、2026年の論文をご紹介しました。

これまで同じエケベリア属として扱われてきた植物たちも、DNAから進化の歴史を調べてみると、必ずしも一つのまとまりではなかったんですね。

そこで、葉や花の構造、染色体、地理的分布などを総合し、カリロアという独立した属に整理することが提唱されました。

ただし、44種すべての系統関係や種の境界が完全に解明されたわけではなく、今後の研究でさらに分類が変わる可能性もあります。

また、今回の変更によって、カンテの育て方が突然変わるわけではありません。

すでに育てている人は、今までどおり植物の状態を観察しながら管理していけば大丈夫です。

これから購入する人も、新旧の学名が混在する可能性はありますが、名前だけに惑わされず、植物の特徴や由来を確認して選ぶことが大切です。

それにしても、長年エケベリア・カンテとして親しまれてきた植物が、カリロア・カンテになるとは……。

いやぁ、慣れるまで少し時間がかかりそうです。

まぁ、カンテ本人(本草?)にしてみれば、

「人間たちが勝手に名前を変えて騒いでるなぁ」

くらいの話なのかもしれませんね。

名前が変わったからといって、カンテの美しさが変わるわけではありません。

でも、その背景にある進化の歴史を知ると、もっと楽しめると思いません?

多肉植物は、育てるだけでも楽しい植物です。

けれど、どうしてこんな姿になったのか、どんな場所で生きてきたのか、そしてどんな仲間と共通の祖先を持っているのか。

そんなことを知っていくと、一鉢の植物から見えてくる世界が、ずいぶん広がります。

こうして植物のことを一つずつ知っていくのも、多肉植物の楽しみ方の一つだと思います。

皆さんのおうちにも、今回カリロア属に分類された植物がいるかもしれません。

ぜひ、名札を確認してみてくださいね。

 


参考文献

de la Cruz-López, L. E., Rodríguez Peña, N., Vergara-Silva, F. & Espinosa, D. (2026).

Richness and endemism patterns of the new genus Carrilloa (Crassulaceae) for Mexico and Guatemala.

Botanical Sciences, 104(4), 1182–1223.

DOI:https://doi.org/10.17129/botsci.3893

※本記事では、上記論文で提唱されたCarrilloa属の分類を紹介しています。分類体系は研究によって見直される場合があり、すべての学術データベースや研究者が同じ分類を採用していることを意味するものではありません。また、栽培・購入・流通への影響に関する部分は、論文の研究結果から考えられる実務上の考察であり、著者らが市場調査や栽培試験によって直接検証した結果ではありません。

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